青い高架線

過去長編から抜粋

※昔書いてたSW夢の長編の一部の下書きがメモからなので、中途半端なところで終わります。存在感のあるモブがいるので注意。

シュミ・スカイウォーカーの死は私とアナキンに大きな喪失感をもたらした。

アナキンに父親はおらず、シュミ1人だけがアナキンの血のつながった家族だった。シュミは昔から、親のいない私のこともかなり気にかけてくれていて、私も彼女を本当の母親のように思っていた。シュミという存在は私たちの心の大部分を締めていて、彼女を失うことはその分心に穴が開いた様だった。ジェダイの仲間は私たちを励ましたが、結局同じ苦しみを持つものにしかその苦しみはわからない。ましてやジェダイの仲間たちは、教義のもとに私たちがいつまでも死の悲しみに囚われることを良しとしなかった。私とアナキンは深い悲しみの中にいて、お互いの心の穴を埋めるようにさらにそばにいるようになった。

「心配しなくていいんだ、#NAME1#。僕が君のことを守る」

 その時、いつだったか、アナキンは決断したように言った。私のことはいいと笑おうとして、できなかった。自分の気落ちした姿から、彼にそんなことを言わせてしまったのだ。そういう後ろめたさをずっと感じていた。一番傷ついているのは、肉親を亡くしたアナキン自身であるはずなのに。悲しみを比較することはできない。だが唯一の家族であった母を亡くした彼の方が、私よりも辛い思いをしていることなど、分かりきった話だった。

 そのあたりから、アナキンはより私に対して過剰に干渉するようになった。昔から、彼は私に対して必要以上に世話を焼く側面があったが、それはさらにエスカレートしていった。確かにシュミを失ったことの喪失感はずっとあったし、悲しみを共有できるアナキンに、無意識のうちに頼ってしまっていたのかもしれない。

それでも時間は流れるし、人生は容赦なく続いていく。そのことに気づき始めた後は、私は1人で少しずつ悲しみを克服していくことができていた。人の悲しみや絶望を癒すのは励ましの言葉ではなく、時間なのだとつくづく感じた。

 少しずつ喪失の痛みから立ち直りつつあった私は、距離を置いていたジェダイの仲間達のもとに再び馴染もうとした。だけどそれは、アナキンの庇護のもとから離れることを意味していて、決して彼の望むところではなかった。幼い頃からずっと一緒だった彼と道を違い始めたのは、あの時からだったように思う。もう一度ジェダイオーダーを信じようとしたのは、私だけだった。

 私の任務にはよくアナキンが同行することが多かった。しかし、私の交友関係はアナキンだけで完結しているわけではない。他のジェダイやクローン達とも行動することは多くあったし、彼らとお互いを支えあうことは必然だった。何度も仲間たちと戦場を共にして私は、彼らへの信用を着実に回復させていた。

 しかしアナキンはそうではなかった。アナキンはオビワンと私以外との関わりが薄かったし、私が他のジェダイと行動することも良く思っていない。

「彼らは君のことを心から理解していない。君を傷つけるかもしれない」

 アナキンは、シュミを失った日から、彼以外の全てが私を害しないかを恐れていた。

 アナキンは鋭い目を光らせて言った。昔の優しい目は、そこにはもうなかった。

 ある時、任務帰りにコルサントに戻った時だった。報告を終えて修練場に向かう。その途中で、かすかに声が聞こえた。

「彼女は家族同然だ。幼い頃からずっと一緒だった」

 アナキンの声だった。#NAME1#は声をかけようとして、立ち止まった。アナキンが一緒にいたのは#NAME1#の友人のうちの一人のジェダイ、アレックスだった。#NAME1#やアナキンよりも確か5つか6つ年上の、ヒューマンのジェダイナイトだった。

「家族か」

「何を笑う?」

 鼻を鳴らして笑ったアレックスに対して、アナキンの声に苛立ちが混じる。

「ならひとつ言っておく。#NAME1#はもう子供じゃない。お前の庇護はもう必要ない」

「ありがたい忠告だな。彼女と出会って数年でよくも知った口が聞ける」

「まじめに聞け、スカイウォーカー。#NAME1#はいつまでもお前の世間知らずのかわいい幼馴染じゃないんだ。はっきり言えば俺から見てもお前の彼女への扱いは不健全だ。彼女に世話を焼きすぎなんだよ」

「世話焼きだと?頼んでもないのに図々しく説教始める奴に言われるとはね」

 アナキンはアレックスに圧をかけるように一歩近づく。

「お前のことは信用していない」

「だろうな。わざわざ教えてくれてどうも」

 アレックスはため息をつく。

「必要以上に#NAME1#に近づくな」

「それもよくない、スカイウォーカー。お前が#NAME1#の人間関係に口出すべきじゃない。彼女は自分で判断できる。自立の邪魔をしてやるな」

「彼女を守っているだけだ!!」

 アナキンは激昂した。アレックスも強く言い返す。

「守っていない。縛り付けているだけだ」

「わかったように!」

「……マスターケノービのパダワンだとは思い難いな。己の力に自惚れ、他人に執着し、支配的ですらある。お前の戦士としての力は強力なのかもしれない。だが、ジェダイナイトという肩書きがお前に相応しいとは思えない」

 アレックスが吐き捨てるようにいった後、#NAME1#は息を呑んだ。アナキンがアレックスを殴ったのだ。#NAME1#がぎょっとしてその場へ駆け寄ろうとすると、よろめいているアレックスが今度はアナキンに拳を叩きつける。

 アナキンは殴られたが、動じなかった。ぎらりと目を細めると今度はフォースを使ってアレックスの呼吸を圧迫する。フォースチョークだった。アレックスも興奮しているのかその目は反抗心に輝いており、己のフォースでアナキンの掌握に抗うが、アナキンの力は一方的だった。これ以上見ていられないと#NAME1#は彼らの間に飛び出した。

「何をしているんだ!」

#NAME1#の一声でどさりとアレックスが地面に落ちる。急いでアレックスのもとへ駆け寄り、#NAME1#は必死になってアレックスを起こす。

「大丈夫か?アレックス」

「見てたのか、#NAME1#」

 血の混じった唾液をアレックスは地面に吐き捨てた。

「#NAME1#、そいつに触るな!!」

 アナキンは怒鳴ったが、構わずに#NAME1#は心配からアレックスの背中をさすった。

 アナキンはその光景をみて、動揺した。その瞳には、明らかに痛みの色が滲む。アレックスはため息をつくと立ち上がり、汚れを払った。

「スカイウォーカー。評議会には入れても、ジェダイマスターになれないわけだ」

 それだけ言って、アレックスは踵を返す。アナキンが義手の拳を握ったのがわかった。アレックスは引き止めようとする#NAME1#へなだめるように片手を上げて制した。#NAME1#は明らかに彼の腫れた左頬が気がかりだったが、怪我をしているのはアナキンも同じだった。このままアナキンをここに放っておくわけにもいかないと思い、追いかけることはしなかった。

「アナキン…!」

 怪我をしているとはいえ、先に殴ったのはアナキンだ。それに対して、#NAME1#がアナキンを咎めるために振り返ると、不意に抱きしめられた。強い力だった。

「大丈夫だ。心配するな、君は僕が守る」

 アナキンはいつかのように言った。声は切羽詰まって震えていた。抱き返すことはとてもできなかった。どうしてこんな風になってしまったのだろう。私たちはいつから、一体どこで間違ったのだろう。

 その夜、訓練棟で待ち合わせたアレックスにもう一度昼間のことについて謝った。アレックスは全く気にしていない様子で口角を上げた。そういえば、そもそもさっぱりとした男だった。

「いいよ。俺も奴を煽った」

 アレックスの左頬は痛々しく腫れており、#NAME1#は顔を顰めた。

「気にしていない。君も気にするな」

 立ち上がったアレックスはそのまま片手を上げて歩き去っていってしまった。それは彼なりの優しさだと分かっていた。

 #NAME1#も宿舎に戻り、自分の部屋の中に入った時だった。ぼんやりとベッドに陰が佇んでいる。見慣れた輪郭だった。

「アナキン?」

 #NAME1#は訝しむように目を細めた。

「どうして私の宿舎に…」

「どこへ行っていたんだ?」

 #NAME1#の問いに答える前にアナキンが強張った口調で言った。

「何?……訓練棟にいたよ。それより、どうして私の宿舎に」

「訓練棟には誰といた?」

 #NAME1#が言い終わる前にアナキンは静かに尋ねた。 #NAME1#は口をつぐんだ。ここでアレックスといたことを正直に答えるべきではないと思ったから。

「誰といたんだ……」

 アナキンは#NAME1#の動揺を察すると、苛立ちとともに口調を強めた。

「言わないなら僕が言う。アレックスと一緒にいたんだ、そうだろ?」

「……どうしてそれをアナキンが知る必要がある?こんな些細な報告に一体何の意味があるんだ?」

 最近の彼の過保護さは、もう度を越していた。以前からの不満をぶつけるつもりで反論しようとしたが、返ってきたのは意外な答えだった。

「奴を愛してるのか?」

 #NAME1#はアナキンの質問の意図が分からず、「何?」と聞き返す。アナキンは何も言わなかった。ただ静かにこちらの答えを待っているようだった。

 #NAME1#は、言葉を選んだ。

「アレックスだけじゃない、オビワン、シュミおばさん、そしてアナキン。皆を愛しているよ。私はジェダイだ。誰か一人のみ愛することはジェダイの掟に反する」

「僕のことなど愛していない」

 アナキンは自嘲気味に言った。

「なぜそんなことを?」

「愛していれば僕に隠し事などしない。愛しているなら僕の言うことを聞くはずだ」

「アナキンの言うこと?」

 #NAME1#は鼻で笑った。

「散々聞いてきたよ」

「聞いていない」

「私はもう一人でも大丈夫だよ、アナキン」

 #NAME1#の訴えは必死だったが、自身にも言い聞かせるような声だった。アニ、と呼ばなくなって久しい。いつからか#NAME1#はアナキンを愛称で呼ぶことはなくなっていた。

 沈黙があった。#NAME1#はアナキンの言葉を待っていた。アナキンはゆっくり口を開く。

「僕なしで?」

 せせら笑うような声だった。

「そんなはずがあるわけない!」

 そして、すぐに強く言い放った。

「#NAME1#、君は本当に自分をわかってないんだ!今でも君は、無謀で、世間知らずだ。軽率だ!自分の力で何とかしてるつもりかもしれないが、未だに誰かの導きに依存してる」

「…ありがたい指摘だ。もうマスター気取りか?」

 アナキンの責めるような口調に、#NAME1#も静かに怒りが滲む。

「その傲慢ささえなければ、今はもうマスターになれただろうに。」

───マスターになれないわけだ。

 アレックスも言った言葉だった。アナキンは激昂した。

「お前まで僕を!!」

 アナキンは#NAME1#の肩を強く掴み、その拍子に壁に押しつける。

「っ、やめ…!」

「……ああ、そうか」

 #NAME1#の悲鳴を無視してアナキンは抑揚の無い暗い声で言った。

「あいつが君に僕と対立するよう唆しているんだろ?」

 アナキンの表情は俯いて長い髪に隠れており見えなかった。声だけがアナキンの激情を物語っている。

「何を言ってる?」

「わかったよ。ああ、そういうわけだ!」

 訝しむ#NAME1#をアナキンは威嚇するように強く言って制した。

「アレックスは君の幼馴染である僕を邪魔だと思ってる。やつは僕から君を引き離そうとしてるんだ」

「アナキン、違う」

「どう違う?」

 アナキンは#NAME1#の言葉をすばやく遮った。

「あいつは、アレックスは、君を誘惑して、堕落させようとしてるんだ。君と関係を持って、掟を破らせて、君をジェダイ聖堂から追放させるつもりなんだ!」

「何を言ってる?落ち着け、アナキン」

「ああ、わからないのか?#NAME1#」

 軽蔑するような笑い声だった。

「彼は寺院に来るのが遅かった僕たちを疎ましがってるんだ」

「どうして僕のこと信じられないんだ」

「それとも君もアレックスの味方なのか?#NAME1#、僕を。裏切るのか!」

「絶対に君を奴らに渡さない!」

「絶対にだ!!」

 アナキンの怒鳴り声の後に、乾いた音が部屋に響く。

 #NAME1#がアナキンの頬を叩いたのだ。初めてこんなことをした。自分のしたことも、アナキンに言われたことも全て信じられなかった。

 #NAME1#はアナキンの荒い呼吸を聞いていた。アナキンの表情は長い髪に隠れていてわからない。#NAME1#は彼を押し退けて素早く部屋を出て、宿舎の廊下を走った。アナキンから、自分の宿舎から少しでも遠ざかりたかった。

 シュミが死んでしまったから私たちはこんな風になってしまったのだろうか。私たちはシュミを救えなかった。アナキンはシュミを救えなかったことを悲しんでいる。ジェダイオーダーへの怒りがある。そして大切なものを失うことを今でもずっと恐れている。

 信じたくなかった。さきほどアナキンから感じたのは、確かにフォースの暗黒面だった。ずっとそばにいたのに。ずっとアナキンのそばにいたのに、彼のことが見えていなかった。

 長い通路を走っていた#NAME1#はやがて立ち止まった。荒い呼吸を落ち着けるとゆっくり歩き出す。

 オビワンのところへ行って、何が起こっているかを話すつもりだった。

(過去長編から抜粋)

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